えちごトキめき鉄道運賃改定について
日頃より、えちごトキめき鉄道をご利用いただき、誠にありがとうございます。
弊社では、2020年4月に平均1.3倍の値上げとなる運賃改定を行いました。また2022年3月に公表した中期経営計画(2021年度~2025年度)に基づき、地域の鉄道として安全・安定輸送のため日々努力するとともに、利用促進や経費削減に取り組んでまいりました。
しかしながら、弊社を取り巻く環境は厳しさを増しており、現行の厳しい経営を改善するため、近く北陸信越運輸局へ運賃の変更認可申請を行う予定です。
これが認められれば、2025年10月1日に普通運賃、定期運賃(通勤・通学)を平均18%値上げするものとなります。また、運賃改定と合わせて、開業時から激変緩和措置として実施しておりました他社線との乗継割引を、普通旅客運賃、通勤定期運賃において取止める予定です(通学定期運賃は継続実施)。
ご利用いただいている皆様におかれましては、大変ご負担をお掛けいたしますが、将来にわたって地域公共交通機関として、安全・安心の鉄道サービスを継続していくため、実施させていただきたいと考えておりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
1. 中期経営計画期間中の経営状況
中期計画期間中は、えちごトキめきリゾート雪月花の運行をはじめ、直江津D51レールパーク・観光急行の活用や各種イベントへの参加などによる利用促進と収益確保に向けた取組を積極的に実施、また、設備投資の抑制や駅営業時間・人員体制、列車運行本数の見直しなど経費節減にも取り組んでまいりました。その結果、2021年度~2023年度においては、新型コロナウイルスの影響等による利用者数の落ち込みはあるもの、中期計画を上回る営業収益、当期純利益を達成いたしました。また、中期計画期間全体においても、営業収益、当期純利益は計画を達成できる見通しです。
しかしながら、沿線地域の想定以上の人口減少に加え、新型コロナウイルス感染症の影響、資材仕入価格やエネルギー価格の高騰、最低賃金の引き上げによる人件費アップなど厳しい状況が続いており、決して楽観視できる状況ではありません。
利用者数(1日平均)推移
年度 | 2019(コロナ前) | 2021 | 2022 | 2023 | 2024(上半期) |
---|---|---|---|---|---|
利用者数 | 10,594人 | 8,591人 | 9,105人 | 9,232人 | 9,822人 |
決算状況(単位:百万円)
年度 | 実績 営業収益 | 実績 当期純損益 | 中期計画 営業収益 | 中期計画 当期純損益 |
---|---|---|---|---|
2021 | 3,524 | 177 | 3,403 | 134 |
2022 | 3,500 | ▲239 | 3,312 | ▲495 |
2023 | 3,621 | ▲63 | 3,377 | ▲133 |
2024(見込み) | 3,558 | ▲296 | 3,542 | ▲257 |
2025計画(予定) | 3,632 | ▲312 | 3,597 | ▲66 |
2021~2025計 | 17,835 | ▲733 | 17,231 | ▲817 |
2. 自治体からの支援
弊社では、開業当初より、国や新潟県、沿線自治体から安定経営に対する補助金をいただいております。それに加え、新型コロナウイルスの影響による経営悪化に対する緊急支援や大規模設備投資に対する支援をいただいております。
これらのご支援をいただきながら、経営改善に努力してまいりましたが、厳しい経営状況を好転させるまでには至っておりません。
3. 運賃改定
中期計画では、計画期間中の経営状況により、運賃再値上げ(改定日:2025年4月1日 改定率:平均1.2倍)を検討することとしておりました。
上記で示したとおり、計画期間中の収支は計画達成できる見通しではあるものの、赤字の経営構造は変わらず、この状況が続けば、現行の運行サービスの提供や事業の維持ができなくなることも考えられます。
一方でご利用の皆様のご負担が増えることは大変心苦しく考えております。そのため少しでもご負担を軽減できるよう、改定時期の見直し(2025年10月1日)と改定率の変更(1.18倍)をしたうえで、運賃改定を行い、経営改善を進めていきたいと考えております。
この運賃改定で弊社の運賃水準は、普通運賃では他社並行在来線会社と比べ高水準となりますが、通学定期においては、他社平均並みとなる見込みです。また、通学定期については、沿線市に負担軽減策の検討をお願いしているところです。
なお、今回の運賃改定により旅客収入は年間約7,200万円増加する見込みです。



※注記
・他社運賃は同距離程度の区間で比較
・道南いさりび鉄道、IGRいわて銀河鉄道の運賃は、すでに公表されている来春の運賃改定後の金額
4. 利便性の向上
運賃値上げによりご利用の皆様にはご負担をお願いしなければなりませんので、弊社では経営改善の推進と並行して、引き続きトキ鉄をご利用いただけるよう、以下の取組を進め、利便性向上・サービス向上にも努めてまいります。
- これまで以上に地域のイベントや行事に対応した臨時列車や増結対応をしてまいります。
- 列車運行状況をよりタイムリーにご案内するモニターの各駅への設置を検討します。
- 学生の利用が多い高田駅への自習室の設置を検討します。
- 他二次交通事業者とも連携・協力し、使いやすい公共交通の促進、地域貢献(観光振興・交流人口拡大)に努めます。
- キャッシュレス決済の導入を検討します。
なお、今後の見通しですが、今回運賃改定を実施したとしても、赤字の経営構造は変わらず、今後見込まれる厳しい経営環境の変化、特に急激な人口減少による利用者の減少や、避けては通れない設備施設の修繕・大規模設備更新などを考慮すると、数年後には資金ショートの恐れもある状況に置かれています。
そのため、今後も鉄道を維持していくために、新潟県・沿線3市と新たな支援スキームの策定に向けた協議を続けております。また社員一同、経営改善に向け更なる自助努力を重ねてまいります。
これまで以上に地域と向き合い、気持ちよくトキ鉄をご利用いただけるよう精一杯取り組んでまいりますので、皆様のご理解、ご協力をいただきますようお願い申し上げます。
2025年 2月
えちごトキめき鉄道株式会社
代表取締役社長 平井 隆志